元料理人のcarlyです。
『料理人になりたい人の8割が辞めていく。』
あなたもそのような事実を聞いたことがあるのではないでしょうか?
それと同時に「自分には強い意思があるから大丈夫だ」と考える人も多いはず。
厳しい世界だという認識があるからこそ
- どんな人が向いているのか?
- 自分は続けられるだろうか
という部分を知りたいのではないでしょうか?
ということで今回は『料理人に向いている人』がどんな人なのかについてチェックしましょう。
こちらの記事を読んでいただければ、料理人になった後の生活をイメージしやすくなります。
これから料理人を目指すあなたにできるだけ『現実』を知ってもらい、これからの人生をよりよく生きてほしいです。
一言に『料理人』といっても色々ある

飲食店といってもファミレスから小さな個人店まであるので、両極端なふたつの料理人が同じ志やスキルで働くのは、どう考えてもムリです。
なので、料理人に向いている人の特徴を紹介する前に、わたしがいう「料理人」ってどういう人たちなの?というお話をしますね。
一言で料理人といっても現場によって仕事や身につくスキルも変わるので、料理人の志や意識も変わってきます。
- チェーン店の調理を担当する人
- 結婚式場の宴会料理をつくる人
- ホテルや旅館の食事を調理をする人
- 個人店の小さなレストランで料理をする人
このような人を料理人といいますが、わたしのイメージでは4が最も「料理人」というイメージに近いですね。
1~3 の場合は一部を外注していることも珍しくなく、料理人としてウン十年働いてきたのに肉の処理の仕方が分からないとか、〇〇ソースの材料がなんなのか知らない人もいるのです。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] 料理人を名乗るからには、外注品がなくてもその料理をつくれないといけない。[/speech_bubble]というのがわたしの中での「料理人」の定義です。
つまり、これからお話する「料理人に向いている人」はわりと少数派なのではないかと。
当てはまらなかったからといって料理人になれないわけでも、料理人として成功できないわけでもありません。
ただ、4の料理人として実力があれば1~3で活躍するのは可能です。
しかし、逆の場合はとてつもない苦労と逆境に耐えなければ難しいでしょう。
料理人に向いている人の4つの特徴

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。
わたしが思う「料理人に向いている人」の特徴を、以下の4つに分けて紹介しましょう。
- 料理が好き過ぎる人
- 料理人としての目標 = 人生の目標である人
- 身体が料理人に適している人
- 理不尽さに耐えられる人
それでは、順番に解説していきますね。
1、料理が好きすぎて他のことを考えられない人
わたしも料理をするのは好きでしたが、ただ料理が好きなだけでは足りませんでした。
料理人として働くと、仕事中だけでなく休憩時間や休日などのプライベートのふとした瞬間までもが、料理のことで頭がいっぱいになります。
好きな人はそれが楽しいのでしょうけれど、「そこそこ好き」というレベルだと、仕事中以外はほかの楽しいことを考えていたいと思うようになるのです。
- 家に帰っても本で勉強する
- 読む雑誌も「料理王国」か「料理通信」
- 休憩中や寝る前に、まかないを考える
- 休みの日に明日のまかないや仕込みのことを考える
- 通勤しながらその日の仕込みをシミュレーションする
- 帰りながら明日の仕込みのシミュレーションをする
料理人になると、いやでも常に料理のことを考えざるを得ない状況になります。
脅迫に近いこの状況は「料理が死ぬほど好きな人」でないと、相当しんどいです。
実際にわたしの上司や同僚の中には、週に一回しかない休みをほかの店での勉強(タダ働き)にあてたり、早朝4時から築地に買い出しに行ってガチ料理をつくったりする人もいました。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] そんな人が一人や二人ではないのです。[/speech_bubble]「みんなやってるよ」「料理人なら当たりまえ」と口をそろえて言うのだから「好き」のレベルが半端でないのが分かりますよね。
中途半端に料理が好きな人間は「とにかく料理が好き」という人には、なにをやっても勝てないのです。
なので、
- ゲーム
- 寝る
- 友達や恋人との時間
- 国民の祝日
よりも料理のことを優先できる人は、ぜひ料理人になってほしいです。
2、料理人としての目標 = 人生の目標
料理人としての目標というのは、例えばこのような感じです。
- コンテストで賞をとりまくる
- とにかく有名になって、芸能人と結婚する
- 自分の店を持つ
- 有名店の料理長に抜擢される
- 料理人を育成する側にまわりたい
以前、人間は2種類に分けられるという内容の記事を書いたのですが、このような人は料理人として成功することが人生の目的なのです。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] 「生きる理由 = 料理人としての成功」というパターン。[/speech_bubble]仕事への真剣度が高いかどうかで、きびしい指導に耐えられるか・地道な下積み期間を乗り越えられるかどうかが決まります。
人間はだれでも、食べたり飲んだり生きるために必須のことには必死になれますよね。
それと同じように生きる目的が「仕事そのもの」だと、当然ながら真剣度は上がります。その目的を達成するために、歯を食いしばってでもほしいものを追いかけるはずです。
(中略)
言ってしまえば、わたしには料理人の厳しさや修行に耐える理由がなかったということです。
ここに気づけなかったせいで、友達がいきいきと働く姿・どんどんスキルを身に着けていく友達と自分を比べて苦しい思いをしました。
このような人に比べて、料理人の仕事のほかにやりたいことがある場合には仕事にも真剣になれないし、厳しさや劣悪な労働環境に耐える理由がなくなってしまいます。
人生の中でなによりも料理人としての成功が優先される人は、料理人に向いています。
ぜひその情熱を料理に向けてほしいですね。
3、身体が料理人に適している人
料理人は身体がなにより大切です。
からだが丈夫で、健康で重いものを持ったり長時間立ちっぱなしの労働に耐えられたりする体質を持っているのも、ひとつの才能です。
たまーにテレビで80歳を超えても厨房に立つ料理人の特集をやっていることがありますが、高齢になっても働けるからだを持っている人は、まさに料理人が天職なのだと思います。
わたしは数年前、料理人として働いていたときにぎっくり腰と坐骨神経痛を併発しました。
自分と同じように働いても身体にまったく異常のない人もいるのだから、持って生まれた素質や運命のようなものなのではないでしょうか。
このような経験をしたことでわたしに料理人は向いていないと確信し、今ではフリーライターとして活動しています。
身体が丈夫だったら料理人を続けていたかどうかはさておき、料理人は肉体的にも厳しい仕事であることには変わりません。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] ほぼすべての料理人がからだの痛みや不調と戦っているのでは?[/speech_bubble]わたしの友達のなかにはパティシエをやっていて小麦アレルギーを発症し、もとからアレルギーの気があったナッツで死にかけた人がいます。
このように、いくら好きでも持って生まれた体質が恵まれていなければ続けることはできません。
体力は後からいくらでもつけられますが、体質や持って生まれた丈夫さ?をあとから変えるには限界がありますよね。
そもそも長時間労働なので仕事帰りにジムなんて無理ですし、肉体労働の疲れがたまって休みの日は夕方まで寝てしまい、体力も衰えていく一方です。
運動しなきゃいけないとは分かっていても、心と身体の疲労が激しくて休みの日はまともに起き上がることすら困難です。
なので、若さを抜きにして厳しい肉体労働に耐えられるかどうか、適した肉体を持っているかが重要なのです。
4、上下関係、理不尽さに耐えられる人
体育会系や精神論ばかりを唱えるつもりはありません。
わたしもこのふたつはめちゃくちゃ苦手だからです。
でも、料理人として上に立つ人間は「体育会系」「精神論」が大好きなのです。これは料理人だけに限らず、社会で生きていくなら誰でも遭遇する人種だと思います。
- とりあえず続ける!耐える!
- ここでやっていけなきゃ他では通用しない
- 上司の言うことがすべてだ、正義だ
- 聞くな、察しろ
- 技術は見て覚えろ、盗め
今だったら
- 時間のムダだな~
- 根拠もなにもない
- 自己中心な独裁だな~
と思うのですが、若い頃のわたしは世間知らずで、上司のいうことが世界のすべてだと思っていました。
「さっきと言ってること違うじゃん、怒られる筋合いないんですが。」
「聞くなっていいましたよね?判断を任せたのは自分なんですから、怒る資格なくない?」
「こうやれって言いましたよね?だったら始めから事細かに指定してください。」
こういうのをマネジメント能力がないとか、コミュニケーション能力がないとかいうのでしょうけど、料理人には社会の一般マナーやビジネスマナーは通用しません。
高卒で料理人の世界に入る人が多く、人として必要な能力を身につける機会がなかったことが原因だと思います。
だから今でも暴力やハラスメントが耐えず「料理人はバカがなる職業だ」といわれてしまうのです。
暴力や暴言は許すまじ。
横道にそれましたが、料理人としてやっていくには
- 上下関係
- 理不尽さ
- 体育会系の精神論
これらについていく気力が必要です。
「断固として立ち向かう!!」という気持ちはすばらしいのですが、料理人は横のつながりがスゴイので歯向かうと業界で干される可能性が大きいです。
もっと具体的にいうと、退職に追い込まれたりウワサを広められて就職できなくなったりする(意図的に雇ってもらえない)ということです。
そうやって料理人の世界で働けなくなって、惰性でチェーン店の調理へと生きる場所を移す人もみてきました。
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料理人を辞める理由のほとんどが、この理不尽さに行き着くと思います。
そうならないためには、
- 順応して身を守ること
- のめり込んで洗脳されないこと
- 料理人の世界を客観的にみること
これらを忘れないでいただきたいです。
「耐える」といいましたが精神論ではなく、自分のためにやり過ごすとも言えるでしょうか。とにかく、受け身になってはいけません。
このような心の使い方が身についている人は、料理人でもやっていける適応力があるのではないでしょうか。
「強い決意」に意味はない

料理人の世界には「自分は一生料理人として生きていくんだ」「自分は大丈夫、絶対に負けない」と強い気持ちを持って飛び込んでくる人も多いです。
実際にわたしの人付き合いの中には
- 大学卒業 → 就職 → 脱サラ →料理学校
- 50代の早期退職 → 料理学校
- 30代の年収1,000万 → レストランで修行
このような人がたくさんいます。
超大手で働いていたサラリーマンが夢や希望を持って「一念発起したい」と思うくらい、料理人ってすばらしい職業なんです。
脱サラの人は、お金があるのですぐ独立してしまうケースが多いですが、その他はほとんど料理人を辞めています。
一念発起して大枚をはたいて学校にも通ったのにも関わらず、続けられない。
収入が減る、過酷な肉体労働だとわかっていて飛び込んだにも関わらず、続けられないんです。
人間の決意は思ったよりもろい。気持ちや夢以上に現実の厳しさと理不尽さに耐えられなければ、強いと信じている自分の気持ちなんて、あっという間に覆ります。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] だからこそ「好き」に勝るものはない。[/speech_bubble]
わたしがそうでしたが、人間の三大欲求と同じレベルで料理が好きでないと、現実の厳しさや上下関係の理不尽さに耐える理由がないのです。
ですから、自分が料理人をやっていけるかどうか考える前に
- 自分がどのくらい料理が好きなのか
- 料理にどのくらい人生をかけられるか
を考えてみてください。
料理人になるためにセンスは関係ない

「センス」がないと料理人にはなれないだろう、と思っている方が多いようです。
しかしセンスは関係ありません、本当に。
センスは後からいくらでも身につけられるからです。
- 食材の組み合わせや盛り付け = センス
- スキルを身につける早さ = センス
これには同意しますが、レストランに食べ歩きに行くことで勉強できますし本やネットでいくらでも情報を得られる時代ですよね。
方法を間違わなければ、センスは簡単に身につきます。
センスの前に「続ける」ことを考えなくてはいけません。またまた精神論ではなく、続けることがなにより一番むずかしいからです。
けっこう無意識でありがちなのですが、料理人になることが目標の人は続きません。子供の頃に「将来はなにになりたい?」と聞かれて「料理人」と即答するタイプですね。(わたしです)
このタイプはそこで思考が止まっていて、料理人になったあとのことやその後の目標を設定していないため、料理人になったことで目の前のレールを断たれてしまうんです。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”1carly.jpg” name=”carly”] このような人には「辞める」という選択肢がある。[/speech_bubble]それを選ぶのは簡単です。
楽になれるから、苦しまなくて済みますから…
料理人に限らず「好き」は強い

辛いこと、苦しいこと、悲しいことを続けるのは誰だってイヤです。だからこそ、続けるのは難しいんですよね。
「辞めなかったのは好きだから」というスポーツ選手も多いように、好きで好きで仕方がないものは「辞める」という選択肢を選ばせない。
自分の友達をみても、学生時代から料理が心底好きだった人は、10年経った今でもバリバリ料理人やパティシエをやっています。
そのような人たちは、ウン百人いる学生の中でも(できるできない問わず)目立っていました。
わたしは料理人を辞めてしまいましたが、料理の世界を客観的に見れるようになって「好きは最強の武器だな~」ということを実感しています。
もちろんわたしがこれまでに語ってきたことは、料理の世界でも小さい部類だということは前途した通りです。
目指す料理人像がちがえば当てはまらないでしょうし、一般の会社員のようにきちんとした環境で働く料理人だってたくさんいるはずです。
ただ、わたしは「自分のなりたい料理人像」になれない人間だったので、料理人を辞めました。
他にもたくさんある料理人像を「自分のなりたい料理人像」に当てはめることができなかった。
料理人にも選択肢はたくさんあります。
一般論やわたしの言ったことを鵜呑みにせずに、自分の選択肢を進んでほしいと思います。
Carlyさん
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コメントありがとうございます。
なるほど。たしかに日本のフランス料理店でフランス語を使うところもけっこうありますよね。
わたしは幸運にも学校である程度身についたのですが、ゼロからとなるとビビってしまうのも無理はないと思います。
本当に慣れだと思いますが、やる気があるのであればチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
わたしが勤めていたお店もオーダーと伝票、専門用語はフランス語で、ゼロから覚えていった年上の人たちをたくさん見てきました。
フランス人シェフが日本語をどのくらい話せるのかにもよると思いますが、料理人だからフランス語が分かる人ばかりではないので、シェフも慣れているのでは?
やる気や料理が好きだという気持ち、うらやましいです。応援しています。